米上院でトランプ前大統領の弾劾裁判が始まった

バイデン大統領、弾劾裁判短縮で同意

 米下院で2度目の弾劾訴追されたドナルド・トランプ前大統領の弾劾裁判が2021年2月9日、上院で始まった。

 2月9日の第1幕は、大統領ではなくなった一市民を弾劾できるか否かをめぐる憲法論争だった。

 しかし、民主党が冒頭から持ち出したのは、議会暴動の模様とトランプ氏のアジ演説を収録した各メディアを寄せ集めて編集した動画だった。

 これは誰が見てもショッキングだった。

 この動画を見ればトランプ氏がいかに暴徒と関わり合いがあったか一目瞭然になるように巧みに編集されていた。

 よほどのトランプ共和党支持者でない限り、トランプ氏の意を「忖度した」というよりも「煽動」と受け取るだろう。

 だが、弾劾裁判はどこまでも政治ショー。法廷ではない。

 評決は選挙で選ばれた上院議員であり、日本ほどではないが、党則と選挙事情とで雁字搦めになっている。

 弾劾するために必要な議員数、3分の2を取れない以上、トランプ氏の首は取れない。

 とはいえ、トランプ氏と共和党を1週間さらし者にするだけで、ジョー・バイデン大統領も民主党首脳たちも弾劾裁判の政治的効果はあったとみているに違いない。

 今回は1週間程度のスピード評決になるのもそのためだ(1回目の弾劾裁判は3週間かけて評決していた)。

 民主党の当初の思惑は、「有罪」評決することで、すでに任期を終えているトランプ氏を政界から「永久追放」することだった。

 ひょっとして共和党から「有罪」評決に必要な共和党議員17人の「造反者」が出るのではないか、との希望的観測も出た。

 しかし、来年の中間選挙で審判を受ける共和党の現職上院議員は20人(そのうち4人がすでに引退を表明)。ここで「造反」すれば、落選する可能性もある。危険な橋は渡れない。「民主主義うんぬん」などいっていられないはずだ。

 弾劾裁判の結果は自ずと出ていた。