中国海警局の武器使用に対応するため、自衛隊や海上保安庁の武器使用基準を国際基準に則って改正する必要がある(写真は海上自衛隊の訓練、2021年1月29日、海自のサイトより)

「ガラパゴス化」している日本の武器使用基準を世界標準に改正すべきである。さもなくば、中国の侵略的行為を阻止できないであろう。

 2月1日、中国海警局に武器使用を認める権限などを定めた中華人民共和国海警法(以下、海警法)が施行された。

 この時、各種メディアは次のように報道した。

「同法律は、中国の管轄下にある海域に違法に入った外国の船舶を強制的に排除する権限などを盛り込んだうえで、違法な活動を行う船が停船命令や立ち入り検査に従わない場合は、武器の使用を認めると規定している」

「このため、海警局の巡視船が、外国の公船(米軍艦艇や海保の巡視艇など)に対して武器を使用するようなことがあれば、偶発的なトラブルから軍事衝突に発展することが懸念される」

 筆者は、上記記事の「中国の管轄下にある海域」を「中国の領域」に読み替えさえすれば、海警法の武器使用基準は、世界標準の武器使用基準と同様であると見ている。

 ただし、海警法では管轄海域が定義されていないことから関連条項は国際法違反であると指摘されている。

 さて、今、中国公船による尖閣諸島周辺の日本領海への侵犯行為を巡り、「グレーゾーン事態」(注1)対処が喫緊の課題となっている。

「グレーゾーン事態」に対して、現行法では、海上においては海上保安庁が、陸上においては警察が対応することになっている。

 海上保安庁や警察では手に負えない事態が発生した場合は、内閣総理大臣が自衛隊に対して海上警備行動や治安出動を命じることができる。

 しかし、日本の自衛隊・海上保安庁・警察(以下、自衛隊等)の武器使用基準は、憲法上の判断から数々の歯止めや制約が設けられている。

 このため、「海上警備行動」または「治安出動」を命じられた自衛官の武器の使用については、「警察官職務執行法第7条」が準用され、相手に危害を与えるような武器の使用は、①正当防衛・緊急避難、②重大凶悪犯罪の既遂犯、③逮捕状等の執行の場合を除き認められていない。

 日本の「警察官職務執行法第7条」に比べて、テレビのニュース映像で我々が目にする外国の警察官の武器使用基準は、これよりも相当緩やかであるように見える。

 ところで、「海警法」が施行されたことを受け、「自民党内では武力行使に至らない『グレーゾーン事態』に対応できる領域警備法の新設のほか、自衛隊の積極投入や海保の権限強化などを求める声もある」と、報道されている。

 筆者は領域警備法の整備も重要であるが、ぜひ自衛隊等の武器使用基準を世界標準に改正してほしいと願っている。

 本稿は、日本の武器使用基準の問題点を明らかにすることを目的としている。

(注1)グレーゾーン事態とは「純然たる平時でも有事でもない幅広い状況を端的に表現したものである(出典:防衛白書)」。一般に、グレーゾーン事態では漁民を装った国籍不明の武装集団が日本の離島に上陸し、不正占拠した場合で、警察や海上保安庁だけで対応できないおそれのある事態を想定している。