尖閣接続水域を航行する中国海警局の公船(第11管区海上保安本部提供)(2013年7月24日、写真:第11管区海上保安本部/AP/アフロ)

(数多 久遠:小説家・軍事評論家、元幹部自衛官)

 中国が「海警法」を成立させました。

 海警法によって中国の公船は外国公船(日本の海上保安庁など)への攻撃が認められるようになります。一方、海上保安庁(以下、海保)には外国公船(中国の海警局船など)に攻撃することができません。

 これを問題視し、海保にも同様の権限を付与するべきという意見があちこちで見られます。また、海警法を執行する海警局船舶に対応するため、海上自衛隊を派遣すべきという意見もみられます。

 筆者も海警法に対しては断固たる措置をとるべき考えていますが、そうした方向の対応は国際法上不可能であり、別の方向を考えるべきです。

 そもそも、こうした意見が根強いのは、船と航空機で国際法上の扱いが大きく違うことを知らない人が多いからなのではないかと推察されます。法律に対する知識不足によって、上記のような意見が出てくるのではないかということです。

 そこで以下では、船と航空機に適用される国際法について概観し、中国の海警法にどう対処すべきかを考えてみたいと思います。ただし、条文を書くとかえって理解を妨げると思いますので、条文は載せません。また、海警法は、尖閣に造られている構造物を破壊する法的根拠を与えるなど他にも問題があるのですが、以下では外国公船に対する攻撃についてのみ考えてみます。