2.武器使用基準改正の必要性と改正案

 日本海で操業していた日本漁船が北朝鮮海軍の旗を掲げたボートの乗組員に小銃を向けられた(2019年8月)、北方領土の歯舞群島の海域で操業中の日本漁船がロシア国境警備軍(日本ではロシア国境警備隊と呼ばれることが多い)の警備艇により銃撃され乗組員1人が死亡した(2006年8月)など世界の領域警備における武器使用基準は日本のそれとは大きく異なっている。

 自衛隊の「武力の行使」や「武器の使用」への抑制的な姿勢は日本の特徴である。

 例えば、自衛隊の実力行使を「武力行使」と「武器使用」とに区別する国は、日本だけである。

 防衛出動下令前は「武器の使用」であり、防衛出動下令後は「武力の行使」となる。

 国連や諸外国では、武器使用も武力行使も同じ『use of force』であり、その根拠を国際法や国連が認める基準に置いている。

 国連武器使用規則では、武器使用の要件は「要員の生命などを防護する場合(A型)」と「任務の遂行を実力で妨害する企てに対する抵抗の場合(B型)」の2つに大別される。

 以上のように、自衛隊の武器使用基準が抑制的であるため、自衛隊の活動範囲が拡大するに伴い、武器使用基準が対処療法的に改正されてきたことは、前項で紹介したとおりである。

 さて、尖閣諸島の領海侵犯など実行支配を目指す中国への対応が喫緊な課題である今、武器使用基準を改正しておかなければ、現場で隊員が行動の制約を受けたり、生命や身体の危険にさらされたりする状況が生起し、中国の侵略的行為を阻止することができないかもしれない。

 武器使用基準の改正の方法であるが、その方法には以下の3つが考えられる。

一つ目は、「領域警備法」を整備し、同法で「領域警備行動」を新設し、そして、領域警備行動で出動した場合の武器使用基準を設ける。

二つ目は、「領域警備法」を整備し、「領域警備行動」による出動の都度、いわゆる部隊行動基準(注3)で、武器使用基準を規定する。

三つ目は、自衛隊法に「領域警備行動」を新設し、出動の都度、いわゆる部隊行動基準 で、武器使用基準を規定する。

 そして、武器使用基準の改正案であるが、領域警備行動により出動を命じられた自衛隊の任務は領域(領土・領海・領空)主権の擁護である。

 従って領域に侵入しようとするものに対しては警告射撃を、領域に侵入したものに対しては、危害射撃を可能とする武器使用基準とする。