2月16日、ミルウォーキーでの対話集会に参加したバイデン大統領(写真:AP/アフロ)

 ジョー・バイデン政権が発足してから、20日で1カ月になるが、具体的な外交政策は、いまだ見えてこない。

 アメリカ国内の新型コロナウイルス対策で多忙を極めているのは理解できるが、アメリカの「不在中」に、中国は周辺諸国・地域に触手を伸ばしている。16日には、機関砲らしきものを搭載した中国海警の「海警1301」と「海警6303」の2隻が、尖閣諸島周辺の領海に侵入した。2月1日に海警法を施行し、この法律に則って、ついに殺戮兵器を携えて尖閣海域に現れたことで、日中間の緊張は、また一段階アップした。

中国の春節にタイミング合わせた電話会談

 そんな中、バイデン大統領は、ワシントン時間の10日夜、北京時間の11日になって、ようやく習近平主席との電話会談に臨んだ。

 日本では、「米中、経済・安保で応酬 バイデン氏 香港・台湾に懸念」(2月12日付日経新聞)などと、あたかもバイデン大統領が習主席に強硬姿勢で向かっていったような報道がなされている。だが、ホワイトハウスHPのブリーフィングページを見ると、冒頭で、「大統領は春節(旧正月)を前に、中国の人々への挨拶と願いを共有しました」と書かれている。

 実際、中国では12日が春節で、米中首脳会談を行った11月は大晦日だった。中国側は、「アメリカ大統領が中国に向けて春節の挨拶の電話をかけてきた」というふうに仕向けたのである。

 そもそも、中国の大晦日に電話会談をセッティングしたこと自体、バイデン政権の弱腰ぶりが感じられてならない。中国に対して、香港や新疆ウイグルの人権侵害や、東シナ海・南シナ海での挑発行為などを強調するなら、中国の正月休暇中だろうが構わず電話するくらいの気概がほしい。