日本は先進諸国の中で、社会的養護に占める家庭養護の割合が非常に低く、施設での養育が中心とされてきた。現在も、保護を必要とされた子どもたちの約8割が児童養護施設等の施設で、残りの約2割は里親等の家庭での生活をしている(写真:IngramPublishing/イメージマート)

 欧米に比べて一般的とは言えない里親制度。だが、里親・特別養子縁組によって子どもを迎え入れる家庭の支援制度を検討するなど、国も重い腰を上げつつある。多様化する家族や子どもの形を反映した動きだ。里親制度の現状について、里親家庭で育った山本真知子の論考。

(山本 真知子:大妻女子大学人間関係学部人間福祉学科専任講師)

 2020年11月、厚生労働省は不妊治療を受けても成功せず、里親・特別養子縁組によって子どもを迎え入れる家庭への支援制度を検討するため、当事者の意識調査を実施すると発表した。この里親制度や特別養子縁組制度、耳にしたことはあるが実際にどんなものかわからないという人も多いのではないか。

 筆者は、2019年『里親家庭の実子を生きる 獲得と喪失の意識変容プロセス』、2020年『里親家庭で生活するあなたへ―里子と実子のためのQ&A』を上梓した。どちらも里親家庭で育った自分自身の実子としての体験が基盤となっている。

 筆者の両親は、里親としてこれまで17人の子どもたちを家庭に引き取って育て、現在もそのうちの4人と共に生活をしている。読者の中で、里親をしている人に出会って話を聞いたことがあるという人は多くないだろう。2018年3月末現在、日本全国には里親と登録された世帯が1万1730世帯しかなく、実際に里親に委託されている子どもは5424人のみだからだ。(参照:厚生労働省「社会的養育の推進に向けて」

 現在、日本では約4万5000人の子どもたちが社会的養護のもとで生活している。この社会的養護とは、虐待や親の死亡、病気、行方不明などによって親の元で生活することができず、里親や児童養護施設等の児童福祉施設において養護されていることを指す。少子高齢化社会となって、子どもの人口は減る一方であるが、この社会的養護の元で生活する子どもたちは減ることはなく、ほぼ横ばいで推移している。また、児童虐待の相談件数は年々増加し、支援を必要とする子どもとその親は増加している。

 日本は先進諸国の中で、社会的養護に占める家庭養護の割合が非常に低く、施設での養育が中心とされてきた。現在も、保護を必要とされた子どもたちの約8割が児童養護施設等の施設で、残りの約2割は里親等の家庭での生活をしている。

 2016年に児童福祉法が改正され、家庭での養育ができない場合は、まずは家庭と同様の家庭環境で養育されるように、国及び地方公共団体の責務で必要な措置を講ずるように示された。この「家庭と同様の家庭環境」がまさに、家庭養護である里親や、戸籍上親子となる養子縁組を指している。