コロナ禍の中で急速に拡大する格差と貧困。とりわけ女性やひとり親の困窮は深刻で、日々の生活に苦慮している人々も少なくない。非正規労働の増大、さらに製造業からサービス業へのシフトといった産業構造の変化を背景に拡大してきた格差と貧困だが、ここに来て、臨界点を超えた感がある。
生活困窮者の支援では、NPOなどの支援団体に加えて住民とのタッチポイントが数多くある基礎自治体が重要な役割を担う。だが役所内、さらに外部の支援団体との連携が取れておらず、必要な支援を提供できない自治体は少なからずある。
増加する生活困窮者をどのように支援すべきか。神奈川県座間市のケースを見てみよう。
(篠原匡:編集者・ジャーナリスト)
家賃を払えない人が増え始めた
1月14日午前9時30分。窓が全開に開いた座間市役所の会議室に15人の人間が集まった。参加者は、生活援護課の職員に加えて、地元の社会福祉協議会やハローワーク、就労準備支援やアウトリーチ(※)を手がける組織の関係者。毎月1回、それぞれの状況について情報共有する支援調整会議、通称「チーム座間」の会合である。
※自ら相談機関に出向くことが難しい相談者に対して訪問などを通して積極的に支援していくこと
この日、話題の一つに上ったのは、緊急事態宣言の中、家賃を払えず、家を追い出される人が増えているという話である。
厚生労働省は休業や失業の影響で収入が減り、家賃を払えない人のために、自治体が家賃相当分を支援する住宅確保給付金制度を導入している。緊急事態宣言が出た年明け以降、家賃の滞納で追い出されるという相談が増加しているという報告だ。
それ以外にも、生活援護課の生活保護担当が生活保護の現状について、社会福祉協議会の参加者が生活に困窮する人のための緊急小口資金や総合支援基金の利用状況や延長ニーズについて、ハローワークの参加者が域内の雇用情勢について、就労準備支援やアウトリーチを手がける団体の担当者が引きこもりや長らく就労していない人の状況について、それぞれの現状を説明した。
2020年の夏以降、座間市周辺の経済情勢は徐々に改善しつつあったが、緊急事態宣言後に再び悪化し始めているという点で、すべての参加者の認識が一致していた。
神奈川県の中部に位置する人口13万人ほどの座間市は、東京や横浜に通う人々のベッドタウンとして発展してきた。米軍座間キャンプと日産自動車の座間工場が代表的な存在だったが、後者の座間工場は既に撤退。今はイオンモール座間に姿を変えている。今はパウンド・フォー・パウンドで世界2位になったWBA、IBF統一王者の井上尚弥と、55万本のひまわりが咲く「ひまわりまつり」が郷土の誇りである。
座間市の生活保護受給率は17.42‰と神奈川県の他の自治体と比べて高い(神奈川県の平均は16.61‰)。周辺と比べてアパートの家賃が安いということと、過去に日産の座間工場があり、財政が潤っていたために保護費が高かった面があるという。
生活保護受給者の半数を占めるのは高齢者だが、最近は新型コロナの影響による困窮者も増加している。