2020年5月23日、富士総合火力演習に参加する陸上自衛隊員(資料写真、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(数多 久遠:小説家・軍事評論家、元幹部自衛官)

 1月23日、共同通信が、自衛隊OBが現役自衛官を集めて戦闘訓練を行っているとして問題視する記事を配信しました。

 同記事は、自衛官が外部で訓練を受けることは自衛隊法に触れ、隊内への過激な政治思想の浸透につながるとしています。果たしてこの指摘は正しいのでしょうか。以下では、同記事およびこの訓練の問題点を確認してみたいと思います。

 なお、この記事にはボリュームの異なる2つのバージョンがあります。共同通信が自社サイトに掲載した短い記事(「自衛官に私的戦闘訓練 特殊部隊の元トップが指導」)と、朝日新聞社系のスポーツ紙「日刊スポーツ」に配信された分量が3倍ほどある記事(「陸自OBが私的に戦闘訓練『楯の会に酷似』三島信奉」)です。以下では、内容がより詳細な日刊スポーツ掲載の記事について見ていきたいと思います。

自衛隊法に触れるのか?

 まず、記事には「自衛官が、外部から戦闘行動の訓練を受けるのが明らかになるのは初めて」と書かれています。しかし、過去に類似の事例があったことは、訓練の主催者である当の荒谷卓氏(陸自「特殊作戦群」初代群長、元1等陸佐)が以前明らかにし、すでに公になっています。自衛隊の特殊部隊黎明期、ノウハウが不足していることから、欧米の民間軍事会社などが開講している訓練に隊員が個人(私費)で参加した事例がありますし、射撃については私自身も海外で訓練を受けたことがあります。