過疎化が進む地方にとって、「関係人口」(地域や地域の人々と多様に関わる人々)の創出が急務だ。少子高齢化の対抗策として、地域の外から関わる人を増やす。そういった関係人口を生み出すには、何をすべきだろうか。

「やはり重要なのは観光や交流です。コロナ禍で厳しい状況にありますが、逆に今は、これまでの観光施策を見直す時期でしょう。近年のインバウンド需要や無理のある観光施策は、関係人口につながりにくい面がありました。一方、本当にその“まち”を好きになる見せ方をすれば、むしろ今のような窮地にこそまちの外から支援が来る、本当の関係人口につながります」

 そう指摘するのは、都市工学の専門家である國學院大學新学部設置準備室長の西村幸夫教授。各地の事例を見ながら、まちづくりの魅力を伝えてきた本連載。最終回は、これからの地域を担う「観光×まちづくり」のあり方を考える。

【前回の記事】今の北海道に残る、開拓者たちの「夢の名残」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63381

國學院大學 新学部設置準備室長・教授の西村幸夫氏。1952年生まれ。博士(工学)。東京大学工学部都市工学科卒業、同大学院修了。東京大学教授、同副学長、マサチューセッツ工科大学客員研究員、コロンビア大学客員研究員、フランス社会科学高等研究院客員教授、国際記念物遺跡会議(ICOMOS)副会長などを歴任。専門は、都市保全計画、景観計画、歴史まちづくり、歴史的環境保全。

平時の観光で関係人口を増やすことが、危機から地域を救う

――この1年、観光業は非常に厳しい状況だと思います。それでも、関係人口を作る上では観光が重要なのでしょうか。

西村幸夫氏(以下、敬称略) そうですね。高齢化や人口減少は間違いなく進みます。何もしなければ地方はシュリンクしていくでしょう。古くから受け継いできたまちを持続可能にするには、地域外の支援者が必要です。観光を起点にまちのファンを増やしていくことが求められます。

 今までに関係人口を築いているまちは、この厳しい状況でこそ支援を受けるはずです。最近はクラウドファンディングやECで地域商品を購入するなど、足を運ばなくても支援ができますから。だとすると、平時の観光で着実に関係人口を増やしておくことが、非常時・災害時のサポートを生みます。以前お話ししたレジリエントなまち、回復力のあるまちづくりにつながるでしょう。

 しかし、コロナ前の観光を振り返ると、当時の観光客がどれほど関係人口に寄与したか疑問も浮かびます。

――なぜでしょうか。