通常の診療ができない──全国のコロナ受け入れ病院が悲鳴を上げている。それはわれわれにどのような悪影響を及ぼしているのか。讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)が訴える。

 医療崩壊の定義は定まっていませんが、「コロナ禍前の通常の診療ができなくなること」だとすれば、医療は崩壊しています──前回、私はそう書きました。では、通常の診療ができなくなることで、皆さんにはどのような影響があるのでしょうか。

予定診療を延期せざるを得ない理由

 まず長い間、日本人の死因の首位の座をキープするがんの診療について、見てみましょう。

 多数の新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる病院では、予定入院、予定検査や手術を減らさなければならなくなっています。特に第一波や第三波のような感染蔓延期には、このような外的、物理的な要因によって、数多くの病院で予定診療の遅れが広く発生します。

 実際、私が勤務する自治医科大学附属さいたま医療センターでも、昨年の第一波の4月・5月には手術件数が大きく落ち込みました。その後回復し、秋には通常以上に手術数が増えましたが、これは、夏前の予定手術の延期により患者さんのニーズがそれだけ溜まっていたのだと考えられます。それが、12月以降ふたたび手術件数は減っています。