現代実験物理学の父、
霜田光一はいまも生きている!

 私は150%実践的な音楽家で、芸大ではいじわるなソルフェージュ教官でもあった、サイエンスに関しては常に半歩、身を引くことを弁えた大学人生活を23年ほど送ってきました。

 それだけに集中している人に対して、失礼に当たりますから。

 ただ、こと科学に関してはサイエンス・スクールで学んだおかげで、この「青空」の存在くらいは弁えています。

 そういう「青空」を、戦後の焼け跡の上空に夢見て、すべてをゼロから手作りされたのが「霜田光一の物理」です。

 その猛烈な勢いを横で見ながら、こんな人と同じテーマをやってたら、ぜったいにどうにもならないだろう、どうしたものか・・・などと思ったかもしれない、西川さんも平川さんも、多くの名だたる秀才たちが、新しい分野を求めて船出して、その出先で、各々「火花」を散らして仕事した。

 さらに遅れてシカゴから帰ってきた小柴さんのところなど、あそこは体育会系というか、昼夜の別なく修行僧のように実験するので有名でしたが、もっと別のアプローチに進む際にも「火花」を散らすスタイルは、間違いなく強烈に影響を及ぼしていたのだろうと思います。

 だって、小柴さんが学部学生だったとき、霜田先生はすでに助教授として、学生や院生を教えていたわけですから。

 そんな小柴さんがノーベル賞も受賞し、先日天寿を全うして幽冥境を異にしましたが、それよりも「未来」である2021年の現在も、さらに上の指導教官世代、現代実験物理の真の意味の父である霜田光一先生は「数え102歳の現役」満100歳の今現在もお元気で、今現在もサイエンスしておられる。

 そのこと自体を驚き、喜ぶべきであるとともに、いまコロナで打ちひしがれている大学生、院生たちに、私は声を大にして伝えたいと思うのです。

 霜田先生の青空の精神、その自由と闊達、そして「火の玉」のパワーが、コロナに呻吟する若い世代のこころを揺さぶり、活気づける力となってほしい。

 ジャンル、縦割り、たこつぼ・・・様々なつまらないことたち、「それと自然科学と、何の関係があるのか?」と、ボルツマンやアインシュタインのように問い返さざるを得ない。

 本質と関係ない枝葉末節に蹂躙されて、2021年のティーンや20代たちは、知的にもメンタルにも、ほとんど窒息しそうになっている・・・一教官の目にはそのように映ります。

 それを、本来の精神の自由に解き放つ、強力なイニシアティヴを霜田光一先生の物理に見ないわけにはいかないのです。

 現代実験物理の父、「霜田光一は生きている」。その存在は、2021年のいまをレーザーの光で明るく照らしているのです。

(つづく)