(北村 淳:軍事社会学者)
アメリカ海兵隊は「強襲上陸作戦を敢行する勇敢な米軍の先鋒部隊」というのが、アメリカにおいても一般的なイメージである。その強襲上陸作戦と共にアメリカ海兵隊(以下「海兵隊」)をイメージさせるのが「AAV-7」水陸両用強襲車である。そのAAV-7が、50年ぶりに新型の「ACV」水陸両用戦闘車に置き換えられ始めた。
最も危険とされている強襲上陸作戦
強襲上陸作戦というのは、硫黄島の戦い(デタッチメント作戦、1945年2月19日~3月26日)に代表されるような「自らもある程度の犠牲を払うことを前提として、敵が待ち構える海岸線に沖合の艦艇から殺到して、敵を撃退しつつ上陸して橋頭堡(今後の攻撃の拠点)を確保する」という最も危険とされている軍事作戦の1つである。
もっとも、日本軍相手の場合には“ある程度”では済まない場合がほとんどであり、硫黄島の戦いの場合は海兵隊と海軍(衛生兵と工兵は海軍に所属)の戦死者6821名、戦傷者1万9217名であった。
そのような強襲上陸作戦で、上陸艦隊から海岸線に殺到する際に活躍するのが水陸両用車と上陸用舟艇である。とりわけ、アメリカ海兵隊による太平洋での日本軍との死闘が始まったタラワの戦い(ギルバート諸島タラワ環礁ベティオ島で1943年11月21~23日に行われた戦い)以来、水陸両用車は強襲上陸作戦を表看板に掲げる海兵隊を特徴付ける車両となった。