次期政権は中道・国際協調・同盟重視
11月4日の米大統領選挙は、その後、選挙結果を巡って大混乱し、長期戦の様相を呈していた。
ドナルド・トランプ大統領は、いまだに敗北を認めず法廷闘争を続ける構えだが、12月8日の「避難港」の期日、すなわち開票結果を確定する期限を迎え、中西部ウィスコンシン州を除く各州で結果が確定された模様で、ジョー・バイデン氏が次期大統領に就任することがほぼ固まった。
ようやく、来年1月20日にバイデン氏が第46代米大統領としてホワイトハウスの主になる見通しとなった。
民主党予備選挙で、いわゆる有力候補として扱われていた候補者は、合わせて29人に達していた。
そのうち、最初の党員集会・予備選挙であるアイオワ州党員集会が開かれた2020年2月3日時点で選挙活動を継続していたのは、それでも11人に及び左派と中道の乱立・乱戦模様であった。
結局、ピート・ブタジェッジ前インディアナ州サウスベンド市長やエイミー・クロブシャー上院議員など中道系の候補が選挙戦からの撤退を表明し、穏健中道派がバイデン氏で結束した。
その結果、急進左派のバーニー・サンダース上院議員や進歩的左派のエリザベス・ウォーレン上院議員を退け、バイデン氏が民主党の大統領候補となった。
バイデン次期米大統領は、入閣が取り沙汰された左派のサンダース、ウォーレン両氏について、「上院に残って進歩的な政権課題の実現に協力してほしい」との意向を示し、閣内での起用は考えず左派色を薄める模様である。
また、大統領選挙と同時に行われた下院選挙では、民主党は過半数を確保したものの議席を減らし、上院では、共和党が過半数を確保すると見込まれ、議会運営では共和党との協調関係が欠かせない。
そして、今回の大統領選挙は、民主党と共和党の二大政党制を反映し、ほぼ得票数を二分する形となった。
米国の分断を象徴する結果に、バイデン氏は「分断ではなく、融和を目指す大統領になる」との課題を負わされた。
このように、米国の政治事情や二大政党の力学関係から、バイデン政権は、いわゆる中道(バランス)路線を志向する、あるいは志向せざるを得ないと見られる。
中道(バランス)路線では、意見が対立する問題で中間案や現状維持などの無難な政策が採用される一方、トランプ大統領のような旗幟鮮明あるいは極端な政策が排除され、民主の左・中両派、民主・共和の両党が失望する中途半端で成果の見え難い傾向に陥りやすい。
他方、バイデン氏は、選挙戦で「トランプ氏は同盟国やパートナーを軽視し、時には見捨ててきた」と非難し、同盟関係を重視する姿勢を強調した。
また、トランプ政権の一国主義、単独主義の外交・安全保障政策を非難し、気候変動に関するパリ協定への再加入や世界保健機関(WHO)への再加盟、イラン核合意(JCPOA)への復帰と拡充などの必要性を説き、失墜した米国の指導力の回復の処方箋は多国間主義による国際協調であると主張した。
以上の文脈から、2021年1月に始まるバイデン政権の外交・安全保障政策は、①中道(バランス)②国際協調そして③同盟重視の3つがキーワードになると見ることができよう。