米国が不満募らせるドイツの嫌米姿勢
ドナルド・トランプ米大統領は先頃、ドイツ駐留米軍を大幅に縮小する意向を明らかにした。米独間の不仲説を裏づける象徴的な出来事だ。
ドイツは、NATO(北大西洋条約機構)加盟国に課されている国民総生産(GDP)2%の国防支出目標の達成を遅らせている。
そればかりか、ロシア産天然ガスをバルト海経由で直接ドイツに送るパイプライン「ノルド・ストリーム2」計画を支持してきた。
同計画は、欧州のロシアに対するエネルギー依存を高め、ロシアの欧州に対する政治的影響を強める結果になるとして、米国はこれに強く反対し、EU内でも懸念が高まっているにもかかわらずだ。
さらに、ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、トランプ大統領が6月に予定していた先進7か国(G7)首脳会議(サミット)への出席要請を辞退する傍ら、米国が本格的対立の相手とする中国の習近平国家主席との友好関係の維持に力を入れてきたことにも原因がありそうだ。
正確に述べると、敵対する国に対する安全保障・防衛上の「ヘッジ」を疎かにする一方、経済的利益を追求する「関与」に重きをおくドイツの姿勢に対し、米国が不満を爆発させた恰好である。
このような不満は、「安全保障は米国、経済は中国」と都合よく使い分け、双方の間を渡り歩いているように見える日本の曖昧な姿勢に対しても向けられるかもしれない。
トランプ大統領の前大統領補佐官であったジョン・ボルトン氏は、先日「ボルトン回顧録」を出版した。
その内容の真偽はさておき、同著の中でボルトン氏は、在日米軍の駐留経費の日本側の負担を大幅に増やし、年間80億ドルを要求するトランプ大統領の意向を日本側に説明したことを明らかにした。
80億ドルは、現在日本側が支払っている額の4倍余りで、トランプ大統領が「日本から年間80億ドル、韓国から50億ドルを得る方法は、すべての米軍を撤退させると脅すことだ。交渉上、とても有利な立場になる」と発言したとし、米軍の撤退も示唆して交渉するよう指示を受けたとしているからだ。