多国間主義による国際社会、特に同盟国・友好国との協調
バイデン氏は、前述の通り、トランプ政権の一国主義、単独主義の外交・安全保障政策を非難し、気候変動に関するパリ協定への再加入や世界保健機関(WHO)への再加盟、イラン核合意への復帰と拡充などの必要性を説き、国際社会において失墜した米国の指導力復活の処方箋は、多国間主義による国際協調であると主張した。
米国が国際機関から撤退することで中国にその空白を満たす機会を与え、その結果、中国は国際機関で独自のリーダーシップを発揮しようとしており、また、香港の民主主義や新疆ウイグル自治区の人権問題で中国に大きな免責感を与えているとの見立てだ。
トランプ政権でも、米中対立は自由民主主義と共産主義との戦いであることが強調されたが、民主党は特に人権問題に敏感であることから、バイデン政権は、米国の自由や民主主義、法の支配、人権を柱にした「価値観外交」を強める可能性がある。
そして、共産主義、強権支配の中国が世界的に影響力を拡大するのであれば、中国と対立し阻止する立場にある米国は、多国間主義による国際社会との協調、特に同盟国・友好国と協力連携して有利な安全保障環境を構築していく必要性が高まる。
例えば、中国の影響力拡大に対抗するため太平洋諸国12か国からなる貿易圏を創造するはずだった環太平洋パートナーシップ(TPP)協定は、米国の離脱表明を受け、同国抜きで2018年12月に発効した。
他方、2020年11月には中国を含むアジアの15か国が、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に署名した。
米国は、いずれの協定からも蚊帳の外に置かれていることから、米国がTPP協定に復帰するシナリオには十分な可能性が強まっている。