(北村 淳:軍事社会学者)
1996年の台湾総統選挙に対して軍事的圧力を加えた中国を威圧するために、アメリカ政府は2セットの空母艦隊を台湾周辺海域に派遣した。中国軍は強力な空母艦隊の出現に対抗する戦力を有しておらず、戦うことはもちろん、何の手を打つこともできなかった。
こうして中国はアメリカ海軍空母艦隊によって完全に面子を潰された。これ以降、「アメリカ空母を撃破する能力を手にする」ことこそが、中国軍にとって最大の戦略目標となったのである。
そして中国軍および中国技術陣は総力を結集して対空母戦力の開発に邁進した。その1つが対艦弾道ミサイルである。1996年の屈辱を晴らすために臥薪嘗胆した中国軍は、海洋を航行中のアメリカ海軍超大型航空母艦に弾道ミサイルを命中させる能力を、ついに手にしたようである。
「航行禁止区域」に打ち込まれた対艦ミサイル
南シナ海での軍事的優勢を手中に収めつつある中国を牽制するために、本年(2020年)7月、アメリカ海軍は2セットの空母打撃群に南シナ海を航行させた。