米国の大統領選挙は11月3日であるが、ドナルド・トランプ候補とジョー・バイデン候補の得票数が僅差の場合、選挙後かなり長い期間、勝者が決まらない事態が発生する可能性がある。
とくに各種世論調査で劣勢が伝えられているトランプ大統領は、郵便投票などに絡んだ不正選挙に頻繁に言及しており、もしもトランプ候補敗北というメディアの報道が出たとしても、負けを認めず裁判所に訴える可能性がある。
米国の政治的混乱は、米国と対立する中国やロシアを利することになる。いずれにしても、米国の大統領選挙に伴う政治的混乱は世界に悪影響を与える。
最近、米国大統領選挙の混乱に乗じて、中国が台湾併合に向けた行動(軍事行動を含む)をとるのではないかという世界的に著名なコラムニスト、ギデオン・ラックマン氏*1などの主張がなされている。
*1=ギデオン・ラックマン、「高まる台湾を巡る米中衝突リスク」、フィナンシャル・タイムズと日本経済新聞
それらの主張を裏づけるように、香港国家安全維持法による事実上の一国二制度の否定、米国政府の要人の台湾訪問に連動した人民解放軍(以下、解放軍)の威圧行動(解放軍機が台湾海峡の中間線を越えて台湾空域に侵入、長期にわたる南シナ海・東シナ海・黄海・渤海での軍事演習、台北を模擬した市街への攻撃訓練など)がなされている。
また、習近平主席自身が10月13日、海軍陸戦隊(海兵隊に相当)の司令部を訪問し、「全身全霊で戦争に備え、高レベルの警戒態勢を維持しなければいけない」と激しい檄を飛ばした。
さらに、中国の全国人民代表大会(全人代)は10月21日、国防法改正案の草案を発表した。
共産党系のグローバル・タイムズによると、この草案には「国防動員と戦争状態」を規定する「中国の主権、統一、領土保全、安全保障と発展の利益が脅威にさらされている場合、国は全国的または地方の国防動員を行う」という条文が盛り込まれている。
これは、米国との関係悪化が軍事紛争に発展する事態も想定して作成された可能性がある。