太平洋上でヘリコプター「シーホーク」を発艦させる米海軍(11月1日、米海軍のサイトより)

 米国大統領選挙は歴史的な大接戦となり、ドナルド・トランプ大統領は選挙の不正を訴え法廷で最後まで戦う姿勢であり、勝者を確定できない状況がしばらく続きそうだ。

 しかし、選挙人獲得数ではジョー・バイデン氏が必要な270人以上を確保する勢いであり、バイデン大統領誕生の可能性が高くなってきた。

 そこで、バイデン氏が新大統領になったならば、日本の安全保障上、いかなることに注意を払うべきかを考えてみた。

「中国海軍は海自を追い抜いた」

 筆者は最近、『自衛隊は中国人民解放軍に敗北する!?』(扶桑社新書)を上梓した。

 その中でトシ・ヨシハラ*1の著作「龍と太陽」2(注:龍は中国で太陽は日本のこと)とヨシハラの同僚である米海軍大学教授ジェームズ・ホームズの論考を紹介している。

 ヨシハラは「龍と太陽」の中で海上自衛隊と中国海軍を比較して以下のような結論を提示している。

・アジアの海軍力のバランスは大きく変化している。過去10年間、中国海軍は艦隊の規模、総トン数、火力などで海自を追い抜いた。

・中国政府の海軍に対する信頼も、以前には見られなかったほど高まっている。中国は日本の国家意思を自由にできる手段と能力を自国の海軍力が有していると確信していて、北京が暴力を使って脅威(例えば日米同盟)に対抗する可能性を高めている。

・この地域の海軍の不均衡が放置された場合、日米同盟を緊張させ、アジアを不安定にさせる。中国の挑戦を認識し、海軍力のバランスを回復するために迅速に行動することを求める。

 ヨシハラと長年の友人で多くの本や論文の共著者であるジェームズ・ホームズは、ヨシハラ論文を分析した論考*3を外交ウエブサイト「ナショナル・インタレスト」に発表し、以下のように記述しているが、一読に値する。

*1=ワシントンDCに所在する戦略予算評価センター(CSBA)の上席研究員

*2=Toshi Yoshihara, “The Dragon against the Sun”, CSBA

*3=James Holmes,“Yes, China's Navy Now Outclasses Japan's Navy”,National Interest