新型コロナウイルスの感染拡大が米中関係に大きな影響を与え、米中は全面的な競争から全面的な対決に向かっている。
歴史上最悪の米中関係の中で、中国共産党が行っている情報戦は、独善的で火に油を注ぐ結果となっている。
一方で、1999年に出版され世界的なベストセラーになった『超限戦』の著者である喬良少将は、台湾武力侵攻を叫ぶ中国人タカ派とは一線を画し、「今は台湾を攻撃する時ではない」と非常に冷静な態度をとっている。
冷静な喬良少将は手強い。
喬良少将は『超限戦』で、「目的のためには手段を選ばない。制限を加えず、あらゆる可能な手段を採用して目的を達成する」と主張する一方で、「今日または明日の戦争に勝ち、勝利を手にしたいならば、把握しているすべての戦争資源、すなわち戦争を行う手段を組み合わせなければならない。(中略)すべての限界を超え、かつ勝利の法則の要求に合わせて戦争を組み合わせることである」と説いている。
つまり、共産党の単純で露骨な宣伝戦ではなく、喬良少将はあらゆる要素を考慮に入れた冷静で実行可能な選択をすべきだと説いている。
我が国にとっては、単純で粗野な共産党は扱い易いが、冷静に策を練る喬良は手強い相手だ。
歴史上最悪の米中関係
北京大学国際関係学院の王緝思教授の「新型コロナウイルス流行下の米中関係*1」は、現在の米中関係における注目の論考である。
そこには歴史上最悪の状況にある米中関係において、「中米両国は全面的な競争から全面的な対立に向かう可能性」について率直に記述されている。以下はこの論考の注目点だ。