米国のドナルド・トランプ大統領は10月27日、過激派組織イスラム国(IS)の指導者アブバクル・バグダディの殺害に米軍が成功したと発表した。
米軍のIS掃討作戦の節目を迎えたとは言えるが、トランプ大統領の「世界はこれで一段と安全になった」という主張は手前味噌過ぎるであろう。
トランプ氏がバクダディの死亡をことのほか喜ぶのは、米国が中東政策や北朝鮮政策で迷走し、国内外から多くの批判を受けてきたからだ。
その迷走ぶりを観察すると、トランプ氏の対外政策がバラク・オバマ前大統領の消極的な対外政策に似てきて、「トランプのオバマ化」と言わざるを得ない状況になっていることを指摘せざるを得ない。
最近の事例では、シリア北部からの米軍の一部撤退を決めたことをきっかけに、トルコは10月9日、シリア北東部への軍事作戦を開始した。
攻撃目標は、これまで米軍と共にISと戦ってきたクルド人勢力だ。この米軍撤退を受けて、ロシアやシリアがこの地域で影響力を拡大させる動きを活発化させていて、米国の影響力の低下は避けられない状況になっている。
本稿においては、「トランプのオバマ化」が米国の日本などの同盟国や友好国に与える影響に言及したいと思う。
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オバマ化が顕著に
オバマ政権時代、米国内の共和党を中心とする保守派(トランプ氏を含めて)は、オバマ氏を「危機に対処できない弱い指導者である」と徹底的に批判した。
この弱い指導者という評価は間違ってはいないと思う。オバマ氏の危機への対処は、「まず武力を行使しない」と宣言した後に外交交渉を行うのが特徴であった。
武力を行使しないことが分かっているオバマ氏を軽く見る中国の習近平主席、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、北朝鮮の金正恩委員長などの指導者は、米国による口先だけの警告を無視した。
例えば、中国は米国との約束に違反し、南シナ海における人工島の軍事拠点化や米国に対するサイバー攻撃をやめなかった。