(黒井 文太郎:軍事ジャーナリスト)
10月27日未明、イラク西部から8機のヘリで出撃した米陸軍特殊部隊「デルタフォース」がシリア北西部イドリブ県のトルコ国境に近い村落に潜伏していたIS(イスラム国)の最高指導者、アブバクル・バグダディの隠れ家を襲撃し、本人を殺害した。
この件はシリア情勢、米露やトルコなど関係各国の方針、そしてイスラム・テロの趨勢に、今後どういった影響をもたらすのか?
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小勢力ゲリラとして活動を続けるIS残党
まずシリア情勢だが、大勢に影響はないものの、北東部を中心にISのテロが継続することが予想される。今回の最高指導者殺害に先立って、シリア北東部ではトルコ軍が侵攻したことでクルド人中心の武装組織「シリア民主軍」(SDF)が劣勢となり、SDFが管理していた捕虜収容施設から100人単位でISメンバーが脱走した。すでにシリア北東部ではIS残党による爆弾テロが頻発している。その傾向はしばらく続くだろう。
IS指導部が今後の闘争方針に関する明確な声明をまだ発表していないので、いわゆる「報復テロ」をどれほど前面に押し出してくるかは不明だが、いずれにせよSDFが弱ったのを好機として、IS残党はしぶとく活動を続けるだろう。
ただし、戦局としては、ISはすでに軍事組織としては敗北しており、以前のような勢いを取り戻す可能性はほぼない。今後は小勢力ゲリラの1つとして地下に生息する、ということになりそうだ。