新型コロナウイルス対策のため、WHOのテドロス事務局長が訪中、習近平国家主席と会談した(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 中国の武漢市を中心に発生した新型コロナウイルス事案は、中国国内経済の低迷、香港における民主化要求デモへの対処の失敗、豚コレラの発生、台湾総統選挙における敗北など内憂外患続きの習近平体制にとってさらなる打撃となった。

 この一連の失態は、あまりにも強圧的な姿勢を貫く習近平体制がもたらした当然の結果であると思う。

 習近平主席は2月3日、「政府の初期の対応に問題があった」ことを初めて認め、「予防対策に力を入れ、断固として感染拡大を抑えなければいけない」と強調した。

 初期の対応の問題とは患者の数・病状の深刻度などの情報を隠蔽したために、その後の感染の拡大を防止できなかったことを指すのであろう。

 共産党一党独裁であるがゆえの「悪い情報を隠ぺいする体質」は、中国が公表する経済データなどすべてのデータに対する信頼性の欠如に直結している。

 一方で、武漢市(人口1100万人の大都市)の封鎖や11日間(2月3日オープンが目標)という突貫工事で病院建設をするという決断は、独裁国家らしい果断さだと思う。

 中国の危機管理の二面性がここにある。

 今回の新型ウイルス問題は、緊急事態における我が国の危機管理体制を改善するうえで貴重な教訓となることが多い。

 本稿においては、我が国の危機管理体制を改善するにはどうしたらよいかを念頭に考察する。