ホストには武闘派の一面も

 アニキが経営するナイトは、お客に媚びない強気の商売。ある時、アニキが女の客の頭を軽く叩いた。なんと、その客は、あるヤクザ組織の姐だった。それをアニキが知っていたかどうかは分からないが、そうしたノリが、当時のナイトの雰囲気だった。

 その姐さんが、「私に手え出したら、ただで済まんで」いうて、ヤクザが乗り込んで来るという始末。この時、他の従業員はイモ引いて(怖がって)帰ったそうだが、渡氏と舎弟はアニキと店に残った。この時、アニキからはとても感謝された。

 人は、窮地に直面した時、人間の真価が問われる。渡氏と舎弟は、このアニキのお陰で、曲がりなりにも生活ができるようになった。ホストクラブでも、ヘルプに付けてもらい、修行することが叶ったから、アニキの窮地にも付き合うことが当然と考えていた。結局、ヤクザが5~6人位乗り込んできて、散々恫喝された上、50万円ほどの詫び料を払って話がついたそうである。

 その後、このナイトのお店は流れてしまったが、カーネギーのマスターの店に呼ばれた。当時は、夜の街の景気もよく、水商売が潤っていた時代だったから、出来るスタッフは働く場所に困らなかった。マスターは、アニキと渡氏、舎弟をセットで面倒見ると言ってくれた。つまり、カーネギーのマスターがお墨付きを与えてくれたことと同じ。これにより、ホストの社会で大きな一歩を踏み出すこととなった。

上客はヤクザの姐

 当時、ホストクラブに通うのは、ソープ嬢からクラブのママ、そしてヤクザの姐などが多かった。前者は、稼ぎに限界があり、カネを落とさないから小者(こしゃ)。クラブのママは中の上、最後が上客という感があった。

*写真はイメージ

 渡氏の場合、最初に着いたお得意さんはクラブのママ。真面目な人で、遊び人ではなかったが、連れと来店した日から「おれにのめり込んでしまった」という。ホスト遊びで火が付くと金銭感覚がマヒしてしまう。このママのお陰で、渡氏は120人ほど居たホストの中で、ナンバー3に浮上。一回来店すると10万円は落としてくれたし、2日に一度は来店したという。