テレビ番組を見てホストの生き方に痺れる
23歳の頃、引き続き営業に精を出していたが、休憩のために入った喫茶店で、舎弟の友人と一緒にテレビを見ていると(『3時のあなた』のような番組だった)、ホストがテレビに生出演していた。1980年代に入る少し前の頃だ。いい服着て、女にモテ、いい車に乗れる・・・。思わず舎弟に「ええ仕事やな」と言った記憶がある。この日、この時、この番組を見ていなかったら、ホストになったかどうかは分からなかった。
善は急げと考えた渡氏は、行きつけのバーのマスターに「ミナミで一番有名なホストってどこやねん」と尋ねたそうである。すると、「カーネギーや」と教えられたので、早速、舎弟と飛び込みで面接に行った。
面接したマネージャーからは、「スーツ持ってんのか」「どこ住んでんの」などと聞かれ、「で・・・履歴書は」と言われたから、翌日、もう一度出直すことにした。ホストに履歴書が要るとは思わなかった。
翌日、スーツにネクタイ姿で、履歴書を持参して再面接したところ、「よっしゃ、今晩から働いてもらうわ」と話は決まり、舎弟共々、即日採用されたとのこと。
マネージャーは続けて、「早速、源氏名つけんといかん」と言うから、「どないなものがありますか」と聞くと、芸能人の名前から借用するのが一般的らしいということがわかった。たとえば、当時のスターは、石原、高倉、松方、西城などの源氏名があったので、「渡」を源氏名にすることにした。
面白いのは、源氏名の付け方が、関西と関東では異なるのである。関西は苗字を用いるが、関東は名前を用いる傾向がある。たとえば、アキラとかシンゴのような源氏名で呼ばれるそうだ。渡氏いわく、当時の関西ホストは硬派であったそうだ。