古くからの町並みが残る宿場町熊川宿

 若狭と京都を結んで海産物を運んだ「鯖街道」。その最大の宿場町だった熊川宿(くまがわじゅく、福井県若狭町)は、古くからの町並みが保存されていて、多くの観光客が訪れる。

 しかし、いま熊川宿が目指しているのは、古いものが“冷凍保存”された観光地ではない。さまざまな人が持続的なまちづくりに取り組んでいるのだ。町の未来のカギを握る3人が、町が目指すものとそれにかける思いを語った。

熊川宿は若狭と京都を結ぶ若狭街道(通称鯖街道)にある古くからの宿場町(Googleマップ)
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県人会の出会いから話が急展開

 熊川宿の中心地でシェアオフィス&スペース「菱屋」を運営するのがデキタ代表取締役の時岡壮太さんだ。2018年4月に菱屋をオープン。現在は「古民家一棟貸し切り」の宿「八百熊川」も運営している。

町の中心地にあるシェアオフィス&スペース「菱屋」。手前がコーヒーショップ、奥がオフィス部分。菱屋は以前宿場で一番大きな商家だった

 東京にオフィスを構え、開発コンサルタントや設計の仕事をしていた時岡さんが熊川宿に関わるきっかけは、若狭町政策推進課の池田和哉課長補佐との出会いだった。福井県おおい町出身の時岡さんが、東京の福井県人会に参加したとき、東京に3年間出向していた池田さんと知り合ったのだ。

 時岡さんが「いずれは福井の仕事をしたいと思っている」という話をすると、池田さんがすぐに案内してくれることになり、さらにやりたいことを若狭町長にプレゼンするように勧められた。「それで町長のところに行ったら、ちょうどこの家(現菱屋)の持ち主さんから相談が来ているという話がありました。モヤモヤとだけ考えていたような状態からいきなり話が具体化した瞬間です」(時岡さん)。2017年5月からプロジェクトが急速に進展し、2018年4月には菱屋がオープン。時岡さんは2019年2月に東京から引っ越して、会社も2019年7月に登記移転した。

 池田さんは2016年に若狭町に戻り、熊川宿の空き家を含め、まちづくりや地方創生事業などに携わった。「大きな要素として公民連携を進めたいということがありました。行政の仕事も民間と一緒になって取り組んでいこうというところに、時岡さんといろいろな要素がぴったり合ったので、ぜひ!ということでスタートしました」(池田さん)。