ドライブインシアターが開催された福井県美浜町の水晶浜。若狭湾に面した人気の海水浴場だ

 福井県美浜町にある水晶浜海水浴場は、新型コロナの影響で今年の閉鎖が決定。

「水晶浜の存在を忘れてほしくない。そのために何かやりたい」
「ドライブインシアターはどうだろう」
「やりたいが、結構な費用がかかる」
「費用の一部をクラウドファンディングでまかなおう」

 急遽行ったクラウドファンディングは無事成立。63万円の支援金が集まった。そして2020年10月3日、ドライブインシアター、いわば“砂浜で行う映画上映会”には満員となる50台の車が来場。トラブルもなく無事上映され、観客もスタッフも満足感を味わいながら終了した。

 資金不足が危ぶまれたイベントだったが、クラウドファンディングの利用によって無事乗り切ることができた。企画の立案から実施まで4カ月に満たないという超短期間のプロジェクトで、どのように資金調達したのか。ドライブインシアター実現までのドキュメントを紹介しよう。

不安の中、クラウドファンディングをスタート

 ドライブインシアターを企画、実行した「タソガレシアター実行委員会」は、福井県美浜町に住む10人のメンバーで結成された。実行委員会の足立修一代表に発案から上映当日までの一部始終をうかがった。

 福井県の敦賀半島、若狭湾に面した水晶浜は、冒頭の写真のようにきれいな砂質の砂浜だ。すぐ前に大きな駐車場があるという便利さもあり、年間に約20万人が訪れる人気の海水浴場である。ところが今年5月末、新型コロナウイルスの影響で、今夏の水晶浜海水浴場の閉鎖が決まってしまった。

水晶浜から南西にある常神半島方向を見る。砂浜の真ん前に大きな駐車場がある

 6月中旬、水晶浜近くに住む南宥希(ひろき)さんが、「毎年大勢の人が来る水晶浜に人が来ないのはさびしい。来年以降のお客さんも減っていくのではないか。今年ここで何かイベントをやって、水晶浜を盛り上げたい」と考え、ときどきイベント開催などを一緒にやる仲のいいメンバーに声をかけた。こうしてタソガレシアター実行委員会が発足した。

 コロナ禍中でも実施できるイベントとして、屋外に設置された大型スクリーンで車に乗ったまま映画を鑑賞する「ドライブインシアター」が候補にあがった。ところが機材の業者に見積もりをとると、200万円弱と予想外に大きな金額が返ってきたのだ。自分たちの持ち合い、参加費収入、町の補助金(上限40万円)だけでは費用負担が難しいことから、クラウドファンディングを利用してみることになった。