地元の新聞社と銀行が乗り出す理由

 ところで、タソガレシアターが利用したクラウドファンディングサイト「ミラカナ。」(https://readyfor.jp/pp/mirakana)とはなんだろうか。これは福井新聞社と福井銀行が連携し、READYFORが運営する、福井県内向けの“地元密着”型クラウドファンディングサイトだ。

 福井新聞社と福井銀行が組んで、この取り組みを始めたのは2018年4月。福井新聞社執行役員新規事業担当の森瀬明氏は「地元に能動的に関わって、お役に立っていくことができないかということで、クラウドファンディングを始めました。地域が元気になっていくというのが究極的な目的です」と説明する。

 一方の福井銀行は「お客さまの営業力や販売を強化するサービスを探しているなかでクラウドファンディングに行き着きました。検討している新事業や新製品に本当にニーズがあるかどうかを確認できる、資金調達の一つの方法として考えられます。福井の企業を育成するという点で福井新聞社に共感を感じたので、一緒にやっていきましょう、ということになりました」(福井銀行営業企画グループの森下智彬氏)という。

 これまでの実績は、終了したプロジェクトが44件で、そのうち42件が目標額を達成して成立。募集中が3件(2020年11月20日現在)だ。また、寄付の総額は2018年が約800万円(11件)、2019年が約2200万円(14件)、2020年が現時点までですでに約2800万円(22件)と、かなり増えてきている。

 プロジェクトがミラカナ。を利用する利点の一つは、福井新聞社が新聞紙面やデジタル版などで紹介してくれることだ。福井銀行は達成のためのきめ細かいアドバイスなどで手助けすることもある。実際、上記の達成率はREADYFOR全体よりもだいぶ高いという。また、個別の相談受け付けだけでなく、年度初めには応募を検討している人向けのセミナーも実施している。

 一般にクラウドファンディングは全国(あるいは全世界)の人にアピールできる。だがタソガレシアターの例からもわかるように、プロジェクトのアピール先が、主に地元の市町村や県内である場合も多い。そうすると、そのような地元の人に情報を知ってもらいやすい“地元密着”のクラウドファンディングサイトという価値もあるのではないだろうか。

 一方、ミラカナ。のクラウドファンディング手数料にはこの2社の分も含まれるので、単純にREADYFORに登録するよりは手数料率が高くなっている。

「新型コロナウイルスが蔓延する以前、ミラカナ。はどちらかというと個人や市民団体の人からの応募が中心でした。ところがコロナ以降、事業者が新事業を始めるのにクラウドファンディングを利用したい、という声が非常に多くなってきています。クラウドファンディングを通じて新事業や新製品を周知したい、ということも含め、事業者の利用が今後増えていくと期待しています。そうすれば私たちが目指している地域産業の育成にもつながっていきますから」(福井銀行の森下氏)。