「文化を残す」とはどういうことか

 今後の活動について、時岡さんは主に2つのことを考えているという。

「一つは、空き家活用のための会社を作ることです。ここで新たに出店しようと思うと資金のリスクがどうしてもネックになります。一方で空き家を売ろうという人は相手が個人よりも法人の方が信用を置きやすい。会社が介在することで、お互いに苦労が少なくなります」。

「もう一つは、セレクトショップによる物販です。ここはもともとやまむらだったわけで、山の文化を感じられるものとか山の食べ物とかを、宿やセレクトショップに織り込んでいって、“やまむら熊川”というブランディングをしていくことがポイントになると思っています」。

「物販や飲食は、地域の方を主なお客さんと考えないといけないでしょう。若狭圏、滋賀圏ぐらいの人が日常のちょっと延長という感覚で来ていただく。それを面白がって京都や大阪や東京の人が来る。それが生活商店街であり暮らす場所であるという、あるべき姿なのかもしれません」。

 宮本さんは、熊川宿のブランドの価値をすでに実感しているという。「熊川宿に出店するということが、周りからは信用を得られるようです。文化財を保存している地域のことをよく理解して、地元と共生してやっていこうという姿勢がでるからでしょうか。セレクトショップのうさぎさんは、今年7月に店を開いたとたんに、“うちの商品を扱ってくれ”という依頼がひっきりなしに来るようになって、ここに出店してよかったと喜んでいただいています」。

今年7月に出店したばかりのセレクトショップ「うさぎ」

「もちろん観光のお客さんも大事にします。でも、リサイクルショップに来た人、コーヒーを飲みに来た人がほかのことでも楽しめる。ここを目的に来られた方に付加価値を提供できることが一番大事かなと思います」(宮本さん)。

「文化的な残し方とはどういうことか、を考えています。自然とのつきあい方と暮らしの風景、地元の人が商売とか産業とかで暮らしていく、そういうことが重要な時代になってきていて、それなくして文化的な活動とは言えないでしょう。熊川にはその可能性を十分感じています」(時岡さん)。