- 2024年6月1日から食品衛生法が完全施行された。加工場と住宅を分ける必要などルールが厳しくなり、「無添加・手作り」といった「家庭の味」をウリに道の駅などで漬物を販売してきた農家は頭を悩ませている。
- そんな状況をなんとかしようと立ち上がったのが、「梅ボーイズ」の山本将志郎氏らだ。全国有数の梅産地の和歌山県みなべ町で無添加の梅干しブランド「梅ボーイズ」を手がける。全国の梅干し製造場が新基準に対応するための設備の導入を支援しようとクラウドファンディングを実施。目標金額の12倍となる約1270万円を調達した。
- 山本氏は今回の法改正で、伝統的な「しょっぱくて、酸っぱい」梅干しの生産が難しくなるリスクがあるという。梅干し好きには聞き捨てならない指摘だが、どういうこと?
(湯浅大輝:フリージャーナリスト)
梅干し製造事業者、「営業許可」必須に
しょっぱくて、酸っぱい梅干しが食べられなくなる──。「梅ボーイズ」の山本将志郎氏によると、 6月1日に施行された改正食品衛生法により、日本の伝統食の代表格とも言える「梅干し」が危機に瀕しているという。
食品衛生法は2018年に改正され、以降経過措置が取られてきたが、5月31日に終了した。改正のポイントは、梅干しの製造業者に保健所の「営業許可」を取得する義務を課すというもの。営業許可を得るには国際的な衛生管理基準「HACCP」に沿った管理が義務付けられた。その主な内容は、加工施設と住宅の分離、原材料と漬け樽の保管場所は分ける、といったものだ。
食品メーカーなど大規模事業者はまだしも、道の駅や直売所に漬物を卸す個人農家にとっては多額の設備投資が大きな負担となる。というのも、多くの個人農家は生産した梅を自宅で塩漬け、天日干ししており、専用の加工場は持っていないケースがほとんどだからである。
以前は都道府県に届け出を出せば販売が認められていたが、今回、ルールがより厳格になった。
食品衛生法改正の契機となったのは、北海道の食品会社が製造した白菜の浅漬けが原因で起きた2012年の集団食中毒事件だと言われている。
だが、そもそも梅干しは食中毒になりにくい食品、という声もある。