梅干しにも食中毒リスク?

「そもそも、“食中毒リスク”に梅干しが入っていることに疑問を呈す梅農家さんも少なくありません。浅漬けも梅干しも同じ『漬物』ではありますが、加工方法は異なります。梅干しにはクエン酸という抗菌作用があるほか、加工の段階で水分を抜き、細菌が繁殖しないようにしている保存食です。梅干しにおいても、まれに酵母が表出し商品を回収することはありますが、基本的には人体に悪影響を及ぼさないもので食中毒に極めてなりにくいというのが梅業界のコンセンサスだと思います」

 梅ボーイズの山本氏は、こう強調する。

 山本氏は、日本有数の梅の産地として知られる和歌山県日高郡みなべ町で、梅の栽培から加工、販売まで手がけ、「梅ボーイズ」というブランド名で販売している。現在30代前半の山本氏は5代続く梅農家の三男として生まれ、北海道大学薬学大学院でガンの新薬の研究に従事した後、実家にUターンし「梅干しビジネス」に挑戦している。

「梅ボーイズ」の山本将志郎氏

 梅ボーイズが販売する梅干しは、伝統的な梅干しの製造方法に則った無添加の、しょっぱくて、酸っぱいのが特徴。ネット販売を中心に売り上げを伸ばし、40代女性のファンが多いという。

「梅ボーイズ」の伝統的な「酸っぱくてしょっぱい」梅干し

「食品衛生法の改正が必要ではないとは思いませんが、杓子(しゃくし)定規に基準を守っていれば、安全なのかという点についても疑問です。例えば、手洗い場を複数導入することを求めていますが、そうした設備を設置したとしても、実際にルールに則って手を洗うかは管理者と従業員の心掛け次第。保健所が常にチェックできるわけでもないので、個人的には加工過程よりも、塩分濃度や酸度など最終商品にチェックポイントを設けたほうが安全性は高まると思います」(山本氏)