20年で約25%減った梅干しの消費量

 山本氏が家業を継ぎ、新たに「梅ボーイズ」というブランドを立ち上げたのは、梅干し文化を次世代に継承したいという強い想いがあるからだ。

「あまり知られていませんが、実は梅は全国に品種があります。我々が栽培する南高梅が最もポピュラーですが、愛知県や神奈川県にも固有の品種がある。梅干し製造の分業化が進み、生産効率だけが優先されるようになると、将来なくなってしまう品種も出てくるでしょう。売り上げ規模は小さくても、道の駅や直売所で買える梅農家がつくった梅干しが市場に流通するのは、品種の保護という意味でも重要だと思います」

 神奈川県小田原市の耕作放棄地で梅を栽培する秋澤史隆氏も、「世帯あたりの梅干し消費量が減っている中、梅農家の高齢化も止まらず、後継者も少ない。梅業界は全国的に厳しい状況にあります」と口をそろえる。

右から秋澤史隆氏、山本将志郎氏

 実際、総務省の家計調査によると、1世帯あたりの梅干しの消費量は2023年に626グラムと20年前と比較すると約24%減少している。

「改正食品衛生法の完全施行は、梅業界において『加工』まで手がける農家に大きな影響が出ましたが、今後は栽培面から苦しくなっていきます。梅農家の高齢化は止まりませんし、後継者のめどが立たないところも多い。そうした中、梅ボーイズは新規就農者を10人増やせています。『しょっぱくて、酸っぱい』梅干しを売り続けて、梅干し文化を継承していきたいですね」(山本氏)