中国の場合、ベンチャー企業の支援策においては、電気自動車やドローンなど、支援対象とする具体的な技術・サービス分野が規定されています。同時に、実質的に経営が破綻しており、資金融資で生きながらえている、いわゆる「ゾンビ企業」は積極的に淘汰していく姿勢が打ち出されています。
一方、近年の日本の中小企業支援策は、「産業を根底で支える昔ながらの中小企業こそが日本の力」のようなキャッチコピーが散見されます。しかし、もはや成長が見込めない、死に体となった「ゾンビ企業」を支援して延命させていると、潜在力を備えた新興企業の成長が阻害されるリスクが指摘されています。ベンチャー企業を生み出すためには、こうしたゾンビ企業の淘汰も求められてくるのです。
ゾンビ企業の淘汰に対しては、「職を失う人が出て社会が不安定になる」と批判する声が必ずあがります。気持ちはわからなくはありませんが、近年日本でもサービスが開始されたフードデリバリーサービスのウーバーイーツをはじめ、新たなサービスや産業の登場は、膨大な雇用を生む可能性を秘めています。既存中小企業を淘汰してでも新興ベンチャー企業を支援する価値は高いと言えるでしょう。
また単純にベンチャー企業の不足に限らず、いまだにハンコやFAXを使う日本の仕事風景をみていると、日本人自身がバブル崩壊以降、社会の変化に対して非常に消極的となっているように思えます。そうした消極性がそのまま社会全体の風潮となり、ベンチャー企業が現れないこともあって、変化に乏しい社会を形成するに至っているのではないでしょうか。
日本では、携帯電話をはじめ世界と異なる独自規格が発展することが多く、そうした状況が「ガラパゴス化」と呼ばれました。しかし近年においては古い規格やサービスがそのまま延命されるなど、「シーラカンス化」ともいうべき特徴を帯びてきています。激しさを増す国際競争に生き残るためにも、変化を恐れず、ベンチャー企業を積極的に支援し、新たな商品やサービスを進んで取り込んでいくことが、日本にとって今後より重要になってきています。