かつてはベンチャー企業と呼ばれたソフトバンクやユニクロも、今やすっかり老舗の重鎮企業となりました。しかしユニクロが事業拡大した2000年頃以降は、一部の携帯電話ゲーム会社を除き、新たな商品やサービスの担い手となるベンチャー企業は日本にほとんど現れていません。
例えば中国だと、電気自動車では2014年設立の上海蔚来汽車(NIO)、動画配信サービスでは2009年設立の哔哩哔哩(bilibili)など、比較的若い企業が市場をけん引しています。ドローンの大疆創新科技有限公司(DJI)に至っては、2005年の設立ながら中国国内のみならず世界市場においても最大のシェアを有しています。
こうした、創立20年に満たないにもかかわらず各業界を盛り立てるベンチャー企業が、近年の日本では絶対的に不足しています。
前述の通り、新たな商品やサービスは既存企業よりもベンチャー企業がその担い手となることが多いのは、歴史的にも明らかです。逆説的ですが、近年の日本社会が変化に乏しい理由は、ベンチャー企業が現れないこと、成長しないことが大きな原因と言えるでしょう。
「ゾンビ企業」が阻害要因に
では、なぜ日本でベンチャー企業が誕生しないのか。結論から述べると、政府の振興策に問題があると筆者はみています。
一般的に日本のベンチャー企業の振興策は、「中小企業支援策」としてひとくくりにされがちです。しかも、こうした政府の中小企業支援策では、将来成長が見込まれる分野の新設企業だけではなく、既に成長のピークを迎え今後縮小が避けられない業界の中小企業も、支援対象に入っていたりします。