(柳原 三佳・ノンフィクション作家)
2020年11月3日、いよいよ4年に1度のアメリカ大統領選挙が行われます。
トランプ大統領が再選を果たすのか、それともバイデン氏が勝利するのか、メディアは今、その話題で持ちきりです。
次の選挙で選ばれる大統領は、初代大統領となったジョージ・ワシントンから数えて46代目となります。
ワシントンが着任したのは1789年のことなので、アメリカに「大統領」という職が誕生してから、今年で231年になるのですね。
では、231年の歴史の中で、アメリカの大統領に初めて公式に謁見した日本人は、いつの時代の、誰だったのか、ご存じでしょうか。
実は、その歴史的な人物の玄孫にあたる方が、先日我が家にお見えになり、興味深い歴史談議に花が咲きました。
『一般社団法人 万延元年遣米使節子孫の会』(https://www.1860kenbei-shisetsu.org/)で知り合った、新見正裕さん(59)です。
今回はそのときのお話しの中から、新見さんのご先祖が残した功績と、彼が結んだ日米両国交流のエピソードをご紹介したいと思います。
38歳で初の遣米使節団を率いた新見正興
まずはこの写真を見てください。
(配信先サイトでご覧になられている方はこちらを参照:https://jbpress.ismedia.jp/articles/gallery/62726?photo=2)
これは、1860年、明治維新の8年前に、ワシントンの海軍工廠で撮影された記念写真です。
本連載の中でもたびたび取り上げてきましたが、ここに写る彼らは、日米修好通商条約の批准書を交わすため、幕府から派遣された遣米使節団(総勢77名)を率いる高官たちです。
この中の、さらにトップである「正使」が、前列右から3人目、新見豊前守正興(しんみぶぜんのかみまさおき)です。
当時38歳という若さですが、17歳で将軍・家慶の御小姓となり、長年、将軍の側近くに仕えてきた由緒ある旗本の殿様とあって、その姿には凛とした風格が漂っています。
正興はこの前年、外国奉行(今でいう外交官のような職)に抜てきされ、首席全権としてアメリカ行きの大役を引き受けることになったのです。