大々的な報道

 韓国メディアは、財閥の「総帥交代」を大々的に、それも肯定的に報じた。

 現代自動車グループは、会長就任前日にこの人事について対外的に明らかにした。10月14日の主要紙は、ほとんどが1面でこの人事を報じた。「毎日経済新聞」など経済紙は1面トップだった。

 グループ発足以来初の会長交代、現代創業家3代目に、という事実とともに、鄭義宣氏の人となりや、ビジョンなどを詳細に報じている。

 翌日の15日付でも大きく報じている。

 保守系、進歩系のメディアも含めてほとんどが肯定的な内容だった。有能で礼儀正しく、ビジョンがある・・・。

 こんな内容もあった。

「鄭義宣氏は毎朝出勤するとき、1階の正面玄関は使わない。ここは(父親である)鄭夢九会長(名誉会長に就任)専用だと自分は他の役員と同じ地下を使う」

 ようは、父親を尊敬し、謙虚だといいたいらしい。

 鄭義宣氏に直接会った何人かの韓国メディア関係者に聞くと、確かに評判は良い。自動車産業に対する愛着、熱意、さらに今の自動車産業が置かれた難しい状況に対する理解とビジョンもしっかりしているという声は多い。

 それにしても、「ヨイショ」記事があちこちで目に付いた。さすがに、韓国メディアの一部からもやりすぎとの声が上がった。

 15日朝のラジオ番組で、ある経済記者が「社内報並みの記事が多かった」と批判していた。確かに一部経済紙は、広報資料のような内容の報道を3日間も続けた。

 これだけ好意的な記事ばかり書いてくれるのに、なぜか「就任記者会見」はない。

 2018年にLGグループの会長に40歳の具光謨(ク・グァンモ=1978年生)氏が就任した時も「家族内で協議した」という説明があっただけで会見はなかった。