循環出資

 鄭義宣氏は、現代自動車の株式を2.6%、起亜自動車の株式を1.7%しか保有していない。にもかかわらずオーナー家の後継者として会長に就任できた理由の一つが、「循環出資」だ。

 現代自動車グループの支配構造は複雑怪奇だ。

 例えば、現代自動車の大株主は、21.43%を出資する電装品メーカー、現代モービスだ。現代自動車は起亜自動車に33.88%出資している。

 部品納入会社の現代モービスが現代自動車の大株主で、現代自動車が起亜自動車の大株主。ではこの現代モービスが支配構造の頂上にあるのか。

 そんなことはない。現代モービスの大株主は、17.28%を保有する起亜自動車なのだ。

 現代モービス→現代自動車→起亜自動車→現代モービス・・・循環出資だけではない。現代モービスの大株主は鄭夢九氏(7.13%)でもある。

 また、鄭夢九氏、鄭義宣氏親子が大株主である現代製鉄も現代モービスの大株主だ。

 ことほどさように、グループの支配構造は、一言では説明できないが、結局は、オーナー家がグループ全体を支配できるようになっているのだ。

 現代自動車グループだけでなく、韓国の多くの財閥は成長拡大過程で、こうした支配構造になっている。

 少数株主がグループ全体を支配できるため、公正取引委員会などは改善を求めている。オーナー家支配の正統性も揺らいでいるのだ。

 現代自動車グループも改善を進めようとはしているが、株式を買い取る場合、巨額の資金が必要でなかなか改善しない。

 10月15日、政府の「水素経済委員会」に出席した鄭義宣氏が韓国メディア記者から支配構造改善についての質問を受け、「真剣に考えている」と短く述べた。

 労使問題は最近、好転はしているが依然としてグループの最大の課題である。

 さらにグループ発足以来積極的だった「多角化」戦略も曲がり角だ。現代建設、現代製鉄、さらに証券など金融子会社群・・・。

 新型コロナの流行で事業環境が難しい中で、どうして会長交代に踏み切ったのか。

「待ったなし」の切迫した重大課題が山積する中で、現代自動車グループは、先代会長への配慮から鄭義宣氏への代替わりを遅らせるより、50歳の突破力に期待したのだろう。

 取り組まなければならい改題はあまりに多く難題ばかりだ。3代目世襲会長の前途もだから決して安泰ではないのだ。