オンラインで開催された2020年イグノーベル賞授賞式でのマーク・エイブラハムズ氏。(画像:Improbable ResearchのYouTubeより)

(小谷太郎:大学教員・サイエンスライター)

 2020年9月18日(日本時間)、恒例イグノーベル賞の授賞式がオンラインで開催され、今年も、「こんなことを大真面目にやっている人がいるのか」と世界の多様性に驚かされる10の業績が発表されました。

 これらの受賞業績は、イグノーベル賞に面白おかしく取り上げられていますが、科学的な背景を持つ歴(れっき)とした研究だったりします。(そうでもないものもあります。)

 ここで私がサイエンスライターとして、10本の受賞研究が何を意図して何を明らかにしたものなのか、すべて原論文にあたって紹介しましょう。

イグノーベル賞とは

「人々を笑わせ、それから考えさせる業績」に対して授与されるイグノーベル賞は、1991年、雑誌編集者で会社経営者(当時)のマーク・エイブラハムズ氏(1956-)によって創設されました。

「イグノーベル(Ig Nobel)」は「下品な」とか「不名誉な」を意味する「ignoble」と「ノーベル(Nobel)賞」をかけた駄洒落で、つまり「下品なノーベル賞」あるいは「不名誉なノーベル賞」を意味します。

 授賞式はいつもならハーバード大サンダースシアターで執り行なわれ、紙飛行機が舞ったり、持ち時間をオーバーした講演を係の少女が情け容赦なく断ち切ったりする光景がみられるのですが、今回は諸事情によりオンラインでの開催となりました。

ヨウスコウワニはドナルドダックの声で鳴くか?

イグノーベル音響学賞
受賞者:ステファン・レーバー、西村剛、ジュディス・ヤニッシュ、マーク・ロバートソン、テカムセ・フィッチ(オーストリア、スウェーデン、日本、アメリカ、スイス)
受賞理由:ヘリウム入りの気密室でヨウスコウワニ(メス)を鳴かせたこと*1
 

 日本人はイグノーベル賞の常連ですが、今回は京都大霊長類研究所の西村剛准教授が受賞しています。