地球に衝突する小惑星の想像図。Image by Bern Oberbeck, Dr. Kevin Azhnle/NASA Ames Research Center.

(小谷太郎:大学教員・サイエンスライター)

 2020年7月16日、大阪大学の寺田健太郎教授、東京大学の諸田智克准教授、元・名古屋大学大学院生の加藤麻美氏(現・明星電気)が、「8億年前、月と地球を襲った小惑星シャワー 〜月のクレーターから明らかになった地球の過去〜」というハリウッド的なタイトルの下に記者発表を行ないました*1

 寺田教授はこれまでにも、月の表面に地球起源の酸素を見つけたり*2、はやぶさ(初代)が探査した小惑星イトカワの来歴を明らかにするなど*3 、準周期的に成果を挙げておられます。この連載の話題にも以前取り上げておりますが、寺田教授が筆者の知己ゆえ特別扱いしているわけでは(たぶん)ありません。今後もばんばん成果を挙げていただき、どんどん紹介いたしたいですね。

*1:Terada, K., Morota, T. & Kato, M. Asteroid shower on the Earth-Moon system immediately before the Cryogenian period revealed by KAGUYA. Nat Commun 11, 3453 (2020).
*2:『「月」に吹く「地球からの風」 ~地球から流出し、月に到達した酸素の直接観測に成功!~』(大阪大学、2017年1月31日)
*3:『地球近傍小惑星イトカワの年代史を解明』(大阪大学、2018年8月8日)

クレーターとは

 クレーターとは、隕石の衝突(や火山活動)によって星の表面に生じた円形のくぼみです。双眼鏡や望遠鏡で月を見ると、大小のクレーターが表面を覆っています。

 例えば、コペルニクス・クレーターは直径が93.1 kmもある、かなり立派なクレーターです。このクレーターは直径4 km〜6 kmの隕石の衝突によって生じたと推定されます。質量は1兆トンほどあったでしょう。これは(見積もり方にもよりますが)富士山の質量と同じオーダーです。

アポロ12号の撮影したコペルニクス・クレーター(地平線近く)とラインホルト・クレーター(手前)。 Image by NASA.

 小さなクレーターは、砂場に小石を投げつけたり、小麦粉のボウルに卵を割って落としても、作ることができます。砂場では誰にも当たらないように、キッチンでは食べきれる分だけ使って、実験しましょう。

 しかし隕石の衝突は、小さなものであっても、砂場やキッチンの実験とは比べ物にならない破壊を引き起こします。何が違うかというと、速度が違います。