アインシュタインの「重力波」予言論文を公開、イスラエル

イスラエルのヘブライ大学で披露された、100年前に「重力波」の存在を予言した物理学者アルバート・アインシュタインの直筆論文の1ページ(右)と相対性理論の論文(2016年2月11日撮影)〔AFPBB News

 「重力波観測」の報に接して、強調しておいてよいポイントの1つは「ファクト」の評価にほかなりません。

 「本当に重力波なのか?」というのが、まずもって最初に問われるところです。

 実際、観測された昨年10月から発表のあった今年2月までの約3か月、2つの巨大設備で仕事に従事する多数の共著者が徹底的なチェックを行い「大丈夫だろう」との結論を得て今回の公表に至っているわけです。

 「それを信じるか信じないか?」というのは信仰あるいは盲信というべきであって科学的な態度ではありません。科学の目は「次」を見つめます。

 理学部で同僚と話していての結論は「結局まだ1例目だから」というもので、これから同じ装置が稼働して10、20とファクトが積み重なっていけば、現象の事実性は疑うべくもなくなっていくでしょう。

 逆に言えば重力波観測の第一報が、後から振り返ると「勇み足」であった、という可能性も残っています。

 何にしろ「期待をもって経緯を見守りましょう」というのに尽きるわけですが、一般相対論による「時空の歪み」そのものは、実のところすでにビジネス応用されている、揺るぎようもないファクトにほかなりません。

GPS実用化に不可欠だった相対性理論

 一般相対論を活用する第一線のテクノロジーとエンジニアリング、ご存知でしょうか?

 自動車のカーナビに代表されるGPSの技術は、一般相対論的補正で正確な稼働が確認されている、確立された商用技術の代表格と言っていいでしょう。現在でこそ「商用」にもなりましたが、これは紛うことなく軍事技術にほかなりません。

 カーナビの相対論補正についてはネット上に色々混乱があるようですが、正確を期したく専門家にお教えを請いました。物理学科時代の恩師、早野龍五先生、ならびに後輩で宇宙物理がご専門の小谷太郎君にご教示いただきながら、以下記したいと思います。

 GPS衛星は米国が軍事目的で打ち上げた30個ほどの衛星を連結するGPSシステムが民生転用されたものです。

 人工衛星は地球全体規模のスケール=距離を移動しながら光=電波を用いて地上と交信するため、相対論的な補正を欠かすことができません。

 実は「相対論的効果」といっても2つの相反する要素があり、「特殊相対論による効果」では時間が遅れ、「一般相対論による効果」では時間が進む、という興味深い現象が起こります。