8億年前の岩石に残る痕跡から、そのころ地球は大変寒い時期に突入したことが分かっています。「全球凍結(スノーボールアース)」も何回か経験したようです。
全球凍結は、地球の平均気温が氷点下に下がり、全表面が氷に覆われる現象です。いわゆる氷河期とは比べものにならない壮絶な状態で、これが起きればほとんどの生物種が死に絶える「大絶滅」必至ですが、幸いここ数億年は起きていません。
さて巨大隕石が衝突すると、熱で一時的に蒸発した物質が冷えたものや、吹き飛ばされた周囲の物質などが、大量の塵となります。これが日光を遮るため、広い地域の気温が急激に下がります。高空に舞い上がった細かな塵は1年以上落ちてきません。ある計算では、地表の温度は-40℃まで下がります。
隕石衝突に限らず、温度が下がると、陸地には雪がつもり、海や川は凍りつき、地球の表面に占める氷の割合が増えます。白い氷の表面は、液体の水面に比べて2倍も日光を反射します。そのため、氷の割合が増えると気温がますます下がります。すると氷はさらに広がります。
こうして最悪のシナリオでは、気温低下が暴走し、氷の割合は止めどもなく増えていき、最終的には地球の全表面が凍りつきます。これが全球凍結の起きる仕組みです。
全球凍結状態は安定なため、いったんこの状態に落ち着くと、別の何らかの原因(温暖化ガスの増加など)によって氷が溶けるまで、何千万年間も続きます。
気候変動は多くの要因が複雑に影響しあって起きるもので、8億年前の寒冷化も、隕石衝突のような単一の原因で説明することは難しいでしょう。けれどもオイラリア母天体の分裂が、8億年前の地球寒冷化と全球凍結のきっかけとなった可能性は、否定できません。地球の気候変動が宇宙からもたらされることもあり得るのです。
今回の発表が示すように、月のクレーターは過去45億年間の記録です。正しく読み取れば、はるか昔に宇宙のどこかで起きた出来事を知り、地球の事件の原因を突き止めることもまた可能なのです。