統計の季節性を取り除く2つの方法

 話を今年7月に戻しましょう。7月の売上高は6月を上回っていますが、季節性の割には増え方が物足りません。景気動向を判断する観点からは、7月は6月から「回復した」というよりも「悪化した」と評価すべきです。言い換えれば、百貨店売上高をはじめ、様々な経済統計には季節性が含まれているため、景気動向を判断するためにはその季節性を取り除く必要があるということです。

 計算で季節性を取り除いて数値で示す手法は2つあります。1つは「季節調整」と呼ばれるものです。月ごとの変動のパターンを抽出し、元の数値からそのパターンを取り除く、具体的には割り算や引き算をする、という手法です。国内総生産(GDP)など政府が公表する多くの統計は、この季節調整が用いられています。

 もう1つの手法は、前年同月比を計算して、その推移をみるという手法です。前年の値を基準すれば今年の値を評価できます。もし基準となる前年同月がイレギュラーな動きを示すと、前年同月比が歪んでしまい、今年の値の評価が難しくなってしまうという欠点がありますが、季節調整の手法よりも計算が容易という利点があります。

 百貨店売上高から季節性を取り除くため、前年同月比の推移を計算すると、減少率は3月の▲33.9%から4月に▲73.1%へ大きく拡大した後、5月に▲65.9%、6月に▲20.0%へと縮小が続きましたが、7月に▲21.3%へやや拡大しました。前年同月比の数値から判断すれば、百貨店売上高の底は、やはり緊急事態宣言が発令され、営業時間短縮や営業休止を余儀なくされた4月です。その後、緊急事態宣言が段階的に解除された5月にやや持ち直し、6月に大きく回復しましたが、7月にはやや悪化した、との評価が相応しいです。前年同月比の数値が上向きか下向きかをみることで、景気の方向感をある程度把握することができます。

季節性を排除するために百貨店売上高の前年同月比推移を見ると、百貨店売上高の底は営業自粛や営業休止を余儀なくされた4月