UAEが日本製のロケット打ち上げた意義

 中東の「繁栄への平和プラン」の成否は、関係諸国だけでなく、周辺国の対応にもかかっている。例えば、パレスチナ支援を続けてきており、イランとの関係も良い日本がどう出るかというのは、地域の平和より自国のための政略に走って来た欧州諸国よりも遥かに重要である。

 UAEは7月20日に日本に委託して火星探査衛星を打ち上げた。この功績は、やがて両国民が感じることになるほど重大な成功だったと言える。同時にこれは、イスラエルとアラブ諸国の目指す中東和平と繁栄にも寄与し、日本にとって重要な国際貢献の新たな一歩と言えるだろう。

 まず、UAEにとってのメリットは、(1)2年2カ月ぶりに地球に接近する火星への探査衛星を米中に先駆けて打ち上げたこと、(2)宇宙センター設置からわずか6年という速さで宇宙開発競争に参入できたこと、(3)隠れた宇宙開発技術大国の日本との提携に成功したこと──の3つである。

 一方、日本にとっては、(1)ロケット打ち上げの成功確率が98%と世界平均より3%も高い実績を漸く外国に認められ、JAXA(宇宙航空開発機構)と三菱重工の研究開発が商業ベースに移行するきっかけとなること、(2)安全保障にも絡む宇宙開発分野での提携を機に、通常の軍需製品の輸出先の開拓につなげられること──の2つである。

 かつて民主党政権が政権を奪取した時に、「一番じゃないとダメなのか」とスーパーコンピュータ開発への国費投入に待ったがかけられたことがあった。それ以来、日本は一刻も早く日本国以外からの需要(=収入)を探す必要に迫られていた。特に、中国が桁違いの資金投入で米露に追いつこうとする中で、大国の宇宙開発事業共創に参入できたことは大きな実績だったと言える。

 米国が宇宙軍を創設したことからもわかるように、もはや世界は宇宙が新たな競争の場となっている。一方、米国一辺倒の技術開発だったUAEが、宇宙分野では日本という新しいパートナーを選んだことは日本にとって重要なイベントだったと言えるだろう。