今回の国交樹立に尽力したクシュナー大統領顧問(写真:UPI/アフロ)

 8月13日、イスラエルとUAE(アラブ首長国連邦)が米国の仲介を受けて国交を樹立した。1948年にイスラエルができて以来、イスラエルと国交を樹立した国は、中東アラブ諸国ではエジプト、ヨルダンに次いで3カ国目。ただ、ペルシャ湾に面する裕福な湾岸産油国としては初めてとなる。

 トランプ政権で今回の国交樹立に取り組んだ中心人物は、クシュナー大統領顧問(トランプの娘婿)と、フリードマン駐イスラエル米国大使の二人だと言われている。また、トランプ大統領が本件を発表した場には、国務省の対イラン特命全権公使も同席していた。

 以下の地図を見て頂きたい。ペルシャ湾の入り口に位置するUAEが、サウジアラビア、ヨルダンを超えたシナイ半島の北西岸にあるイスラエルと国交を樹立したことは、地政学上の大きな意味を持つという可能性を感じることができるはずだ。

 民主党のバイデン大統領候補は、両国の国交樹立に対してトランプ大統領の名前に触れずに祝福する一方、国交樹立直前にイスラエルが発表したウェストバンク(ヨルダン川西岸にあるパレスチナ自治区)のイスラエルへの統合中断に言及し、自分が大統領になった場合には統合に反対するとのメッセージを発表した。大統領選挙を睨んだ表現ではあるが、平和の流れ自体には反対できないのは間違いない。

 中東の問題は、土地争いであると同時に宗教争いだとの見方をする専門家は多い。

 イスラエル建国から1970年代まで続いた中東戦争後も、湾岸戦争の時にはイラクのフセイン大統領がイスラエルにミサイルを撃ち込んだ。近年では、イランが反イスラエルのテロ組織を支援している。表面だったところでは領土争いのための紛争の絶えない世界である。しかし、地図を見れば、イスラエルは隣国のうち東(ヨルダン)と南(エジプト)とは国交を樹立しており、残りは北のレバノンとシリアだけだ。

 今回の両国の国交樹立が、中東の地政学を変える可能性は高い。また、そのことは中東原油依存度の高い日本にとってもプラスになることが期待される。