「一帯一路」の国際会議で話す習近平・国家主席(写真:AP/アフロ)

(岩田太郎:在米ジャーナリスト)

※「中国切腹日本介錯論」(1)「『大日本帝国』と同じ轍を踏む習近平と中国共産党」、(2)「中国が先制攻撃を仕掛ける可能性が高いワケ」も併せてお読みください。

大日本帝国の失敗を反面教師にするが・・・

「ミイラ取りがミイラになる」という表現がある。ミイラ採取に行った者が倒れてしまい、結局自分がミイラと化してしまうような結末を皮肉ったことわざだ。

 これは、大東亜共栄圏構想に見られる日本帝国主義の失敗を反面教師にするはずが、いつの間にか日本のアジア帝国建設のビジョンや手法の一部を内面化し、「中国夢」「中華民族の偉大な復興」「一帯一路」「人類運命共同体」などの構想を持ち出すことで、同様の帝国建設に乗り出した中国共産党にも当てはまる。

 中国では、各地の档案館(公文書館)に残る戦前・戦中の日本の一次史料に基づいた研究が盛んだ。2020年に入ってからも、『日本帝国主義中国侵略資料選集』と題された全20巻シリーズが刊行され、「日本がどのように拡張したか」が熱心に学ばれている。

 戦前の日本の新国際秩序構想や戦略、具体的な帝国建設手法を研究することは、その模倣や応用をも可能とする。さらに、それらに内包されている構造的な欠陥や失敗まで取り込んでしまう皮肉が生まれる。

「中国夢」「中華民族の偉大な復興」「一帯一路」「人類運命共同体」という構想を見ても、大東亜共栄圏で日本が既存の国際秩序を改変するために用いた戦略が、あるものは日本の失敗に学んで「改良」された形で現れており、あるものはそっくりそのままの形で再現されている。その意味において、まさに「ミイラ取りがミイラになる」である。

 それでは、中国はどのような順序と方法で国際秩序を変えていくのだろうか。既に現れ始めたパターンである。(1)既存国際秩序の使い倒し・乗っ取り、(2)欧米発の普遍的価値観の否定、(3)国際法の換骨奪胎や代替地域経済秩序の提唱という道筋を分析し、この先数年の具体的な中華帝国建設の展開を予想する。