欧米式と旧ソ連邦諸国の埋蔵量相違

 2つ目の埋蔵量の定性概念とは、埋蔵量の計算(算出)方法に関する別次元の概念です。

 実は、欧米大手石油会社(メジャー系)の埋蔵量と旧ソ連邦諸国の埋蔵量算出方法は異なります。

 通常、欧米でいう確認埋蔵量とは埋蔵量に対する≪確率≫の概念であり、旧ソ連邦諸国の埋蔵量は≪資源在庫表作成≫の概念です。

 欧米の≪確率≫概念は、概ね以下の通りです。

確認埋蔵量 80%以上の確率(90%程度目処)
推定埋蔵量 40~80%の確率(50%程度目処)
予想埋蔵量 10~40%の確率(10%程度目処)

 欧米式確率論に対し、旧ソ連邦諸国の埋蔵量は開発段階別資源量の在庫表です。ある鉱区において油兆・ガス兆が発見されてから、開発・生産に至る過程を分類したものです。

 埋蔵量評価は探鉱・開発が進むと、C2はC1に、C1はBに移行します。

 旧ソ連邦諸国の埋蔵量概念を分類すると、以下7分類になります;

A:探鉱・開発済み、且つ生産中鉱区の確認可採埋蔵量
B:探鉱・開発済みであるが、未生産鉱区の確認可採埋蔵量

C1:発見済みではあるが、未開発鉱区の確認埋蔵量
C2:発見済みではあるが、未開発鉱区の推定埋蔵量

C3/D1/D2:未発見鉱区の想定資源量

 定性概念で重要な点は、技術的に採取可能な埋蔵量か、商業的に採取可能な埋蔵量かという点です。

 旧ソ連邦諸国は国家予算を投入して探鉱・開発作業に従事してきましたので、経済性(商業性)の概念はなく、その時点での最新技術を投入すると物理的にどれほどの原油・ガスを採取できるのかという概念です。

 一方、欧米石油企業は民間企業が主体ですから、地下から天然資源を採取して販売する場合、その事業は経済性があるのかないのか判断します。

 簡単に言えば、そのプロジェクトは儲かるのか、儲からないか(赤字事業)というビジネス概念であり、赤字事業ならば開発に移行しません。

 ですから同じ確認可採埋蔵量であっても、西側概念と旧ソ連邦諸国概念では実態が異なります。

 上記の2つの異なる概念は、どちらかが正しくてどちらかが間違っているということではなく、探鉱・開発に関する哲学・考え方の相違です。

 しかし旧ソ連邦解体後の新生ロシア連邦では現在、埋蔵量概念の抜本的見直しが行われています。

 ロシアの新埋蔵量概念は経済性を重視する埋蔵量概念になるだろうと言われており、来年2021年には新概念に移行するだろうとみられています。

 付言すれば、欧米式埋蔵量の概念では油価が高くなれば埋蔵量は増え、安くなれば減少します。