資源開発は実に不可思議な世界だ。
住友商事がシェールオイル、シェールガスの開発に失敗し、1700億円という巨額の損失を計上することになった。
同社は2012年に米国テキサス州の鉱区の権益(30%)を13億6500万ドルで取得した。しかし、実際に採掘してみると、「地質が予想以上に複雑で、採掘コストがかかる」ことが判明した。同社は事業の見通しが立たないと判断し、リース権および井戸などの設備を譲渡する決断を下した。その売却に伴う減損損失の計上である。
ご存じのように、シェールオイル、シェールガスは地中のシェール(頁岩:けつがん)層から採掘される石油、天然ガスだ。2000年代に入ってアメリカで採掘技術のイノベーションがあり、一気に大量生産されるようになった
(ちなみに、シェール層から採掘されるオイル、ガスは従来の石油、天然ガスと基本的に品質は変わらない。「シェールオイル」「シェールガス」という固有のオイル、ガスがあるわけではない)
今回の住友商事のニュースで不思議なのは、それほど「採掘コストがかかる」ことがなぜ事前に分からなかったのか、ということだ。同社は「見通しが甘かった」と反省の弁を述べるが、どれほど楽観的に巨額の投資をしようとしていたのか。素人目には理解に苦しむと言わざるを得ない。
『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか? エネルギー情報学入門』(文藝春秋)は、石油開発の仕組みやエネルギー業界のメカニズムを一般の読者向けにやさしく解説した本である。著者の岩瀬昇氏は商社で40年以上エネルギー関連事業に携わった。シェール開発プロジェクトでなぜ住友商事のような“事故”が起きるのか、岩瀬氏に話を聞いた。
石油業界は、門外漢には及びもつかぬ、知られざる常識に満ちた世界だった。石油の「埋蔵量は成長する」ことを、皆さんは知っていましたか?