石油開発ではどの会社でも起こり得ること

──住友商事は、「採掘コストが予想以上にかかることが分かった」ためにシェール開発プロジェクトを中断したという話ですが、どんな予想を立てていたのでしょう。なぜ前もって分からなかったのでしょうか。

岩瀬昇氏(以下、敬称略) 地下のことは誰にも分かりません。私たちは三十数万キロも離れた月の表面のことは分かっても、地球のたった何百メール下がどうなっているのかは分からないんですね。見えないからです。掘ってみないと分からない。

 在来型と言われる通常の石油開発は、大まかに言うと3つの段階を踏んで進められます。まず、「探鉱」によって資源があるかどうかを調べます。資源があることが分かったら、それを効率的に採掘するためのプランを作って施設を造る。これが2つ目の「開発」段階です。そして、3つ目の段階が「生産」です。住友商事は非在来型のシェール鉱区を開発案件として買っています。

 最近の探鉱作業では、主に地震探査を行います。人工的に地震を起こして震動の伝わり方を調べ、どこにどんな地層があるのかを調べるのです。今回のケースで具体的にどのような探鉱作業を行ったのかは分かりませんが、シェール層がここにあるだろうというのは分かっていたはずです。

 また、探鉱段階ですでにいくつかの井戸も掘られており「これくらいのコストでこれくらいの石油、ガスを集められる」というデータもあったはずです。住友商事はそのデータをベースに計算していたんだろうけど、計算通りにいかなったということでしょう。買った時期がブームの真っ最中で、取得コストが高かった面もあると思います。

岩瀬 昇(いわせ・のぼる)氏
1948年生まれ。東京大学法学部卒。71年三井物産入社、2002年三井石油開発に出向、常務執行役員、顧問を務める。延べ21年間にわたる海外勤務を含め、一貫してエネルギー関連業務に従事。三井石油開発退職後は新興国・エネルギー関連の勉強会「金曜懇話会」代表世話人として活躍中。