結局、2008年にSECは基準を変えました。オイルサンドも埋蔵量としてカウントすることにしたのです。SEC以外でも多くの人々が同じように認識を変えました。ベネズエラのヘビーオイル(超重質油)も埋蔵量としてカウントされるようになっています。

 その結果、何が起きたか。それまで世界で最大の埋蔵量を誇る国はサウジアラビアだったのですが、ナンバーワンがベネズエラに代わったのです。ベネズエラは大量のヘビーオイル埋蔵量を持つ国でした。オイルサンドが大量にあるカナダもサウジに次ぐ3位になっています。

 このように、昔だったら生産に結びつかないだろうと思われていたもの、埋蔵量とは認められなかったものなどが埋蔵量にカウントされるようになり、埋蔵量は増えていきました。

 スーパーメジャーの1社であるBPが60年以上にわたって発表している統計集によると、世界の確認埋蔵量は93年に1兆416億バレルだったのが、2013年には1兆6879億バレルに増えています。1.6倍の増加です。業界の常識として埋蔵量は間違いなく昔より増えているのです。

──それは世の中の常識とは大きく違いますね。

アメリカはまた国力を高めていく

──シェールガスに関しては、明るい未来を描く人がいる一方で、「バブル」だという声も聞かれます。岩瀬さんはどう見ていますか。

岩瀬 ウォールストリートの投資家たちが参入してきてシェール開発でゲームをしているんだと言う人がいます。でも、それは石油開発事業の本質を知らない人が言っていることだと思います。

 石油開発は、調査段階から実際に生産が始まるまで約10年かかります。「今日はこっち、明日はこっち」と簡単に方向転換できるものではない。やると決めたら腰を据えてやるんです。ウォールストリートの投資家たちが入ってきて、自由に出たり入ったりできる世界ではありません。