連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第10回。感染者を精神的に苦しめ、社会を分断する“コロナ差別”。その差別を克服する処方箋とは?讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)が提言する。

「新型コロナウイルス感染症の怖さは、病気そのものの怖さだけではありませんでした」

 前回は、新型コロナ感染症の軽症・中等症の症状・後遺症の怖さを、実際に感染した看護師にヒアリングしました(第9回参照)。その看護師は、陰性化後1か月半経った今も、体調が以前の6~7割にしか戻らず苦しんでいるという話でした。ところが、闘病生活や後遺症との闘いでただでさえ苦しいのに、それ以外にもまだ苦しみがあると言うのです。

 差別です。

「復職後、勤務していた病院では、『元気に戻ってこられてよかったね』と笑顔で迎えてくれる職員もいました。一方で、新型コロナ感染症についての知識があまりない職員は、私と話す時にあからさまに後ずさりして必要以上に距離を取ろうとしました。遠くから私をチラ見しながらヒソヒソ話をしている同僚もいました。

 中には、面と向かって、『あなたはコロナなんだから、患者さんと接する時は気をつけてね』と言う先輩看護師もいました。まるで汚いものとして扱われているように感じました。

 私は、感染してから心が弱っていました。入院中は病状が悪化して死んでしまうかもしれないと不安でした。ホテルでの療養は結果的に1か月にも及び、その間狭い部屋で誰とも会えない隔離状態が続き孤独でした。現在も、後遺症がこの先どうなるのか見通せていません。