曼荼羅の時間と空間の世界は4種の存在で構成される。

 まずは如来、すなわち仏、悟りを開いたもの。それは、宇宙の真理、悟りの境地を体現した姿をあらわす。

 如来の次に菩薩。菩薩は、宇宙の真理、悟りの境地を説く。悟りを体現してはしていないので、如来、仏になってはいないが、如来の候補者で、観音とか文殊が菩薩の代表的な存在である。

 このほかに密教では、この如来や菩薩を護衛する明王を尊ぶ。それは現世での人間の欲望を肯定し、力を重視する密教の特徴といえる。

不動明王立像。烏帽子山・最福寺

 明王は、法に従わない衆生。煩悩を抱える最も救い難い衆生を力ずくで救うために、威迫して教え諭す。

 そのため、憤怒の表情や姿をしている。また、仏法を脅かす敵には力ずくで介入する。

 日本では明王で特に崇拝されてきたのが不動明王である。

 密教では大日如来と不動明王は一体とされ、密教寺院では不動明王の真言は、一般的に慈救咒 (じくじゅ)と呼ばれるものが唱えられる。以下、不動明王の真言である。

ノウマク サンマンダ バサラダン センダンマカロシャダ ソハタヤ ウンタラタ カンマン

「すべての諸金剛に礼拝する。怒れる憤怒尊よ、砕破せよ」

「不動」の梵名(サンスクリット名)はアチャラナータ(Acalanātha)。

「アチャラ」は「動かない」、「ナータ」は「守護者」。つまり「揺るぎなき守護者」という意があり、その起源はヒンドゥー教のシヴァ神の異名ともいわれている。